展示品>館長室たより 2017年

小さな文学館の大きな喜びⅢ(近況報告)

 「純文学系の雑誌が右肩下がりなのに、その新人賞の応募者ばかりが伸びている」。昨年11月、富山で開催された日本文藝家協会主催の「人口減少と文学」と銘打ったシンポでのパネリストからの発言です。作家の関川夏央氏の司会進行で、歴史学者の磯田道史氏とエッセイストの酒井順子氏がそれぞれの思いを語られました。酒井氏が導入で、富山の特色である海運から鉄道、浄土真宗と仏壇を語り、流れは、テーマである人口減少に伴う文学産業や出版界の衰退に及びました。冒頭の発言は、そこでの磯田氏の発言です。しかし、最後はやはり地元へのリップサービスか、「富山県の高い幸福度が日本の将来像の指針である」と結ばれました。
 富山県人としてはこの結びを評価しながらも、文学館に関わる者としては、やはり言ってみれば同じ〞文学産業〞のいち分野を担うだけに、複雑な気持ちで聞きました。しかしながら、出版産業の衰退は今に始まったことではありません。それがどう進行しようと、だからこそ活字文化を守るために文学館の役割が大きいのだとすぐに思い直しました。
 このシンポは日本文藝家協会の全国巡回の半年ごとのイベントで、今回が9回目になるそうです。日本文藝家協会の著作権管理部の担当でした。
 「今日のパネラーの著作物についても、知的財産であるということを尊重して利用して頂きたい」。シンポが終わってから、その啓発のための説明もありました。
 実はこの日の午前、この協会の著作権管理部長が当館に来館されていました。1か月ほど前の予約で、昨年最後の予約来館でした。
 シンポとともに、その地域の文学館を視察するのも、巡回の大切な役割だそうで、光栄に思いながらも緊張してお迎えしました。通常一般の来館者と同じ基本的な解説をさせて頂いたあとゆっくり展示を見てもらいました。
 展示室から出て来られた第一声が、「思っていたよりもしっかりした展示でした」。多分、厳しくチェックされるのではないかと思っていただけにほっとしたものでした。気を好くして、日本文藝家協会の仕事について、いろいろな質問をさせてもらいました。沢山の作家の著作物を扱い、翻訳権にまつわる契約には大変神経を使っておられるとのことでした。
まったく当館の運営とは比較にならない業務ですが、午後のシンポとともに改めて文学館の役割を認識させられた一日でもありました。
 さて、本年2月末からの開館10周年記念の企画展は、「『金閣寺』の成立をめぐって」です。勿論、著作権法の趣旨を尊重し、目下、準備作業は最終調整段階に入っています。



(2017年1月)
(隠し文学館 花ざかりの森 館長)

全国文学館協議会会報 第67号(2017年1月31日発行) 寄稿