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小さな文学館の大きな喜び6(近況報告)

 例年、6月の全文協の総会時に議事のあと各館からの挨拶の時間があります。つい長くなりがちなので、各館3分ぐらいと言われています。年間スケジュールは事前に提出されて一覧表にして総会で配布されていますので、それ以外の話題をということになっています。しかし、企画の悩みなどを語ろうとしますと、どうしても企画展のスケジュールと絡むことになります。
 当館は毎年3月のみの定期開館で、年1つの企画です。同年11月末までは同じ展示のまま予約来館で運営しています。今年は「『橋づくし』の成立をめぐって」がテーマでした。来年の予定は、(仮題)「三島由紀夫と北杜夫」としていました。
 個人で運営している文学館であり、生資料にも限りがあります。たまたま入手した直筆原稿を軸に企画を練ることになります。来春展示しようと思っていたのは、「北杜夫の結婚」という、「婦人画報」初出となった自筆原稿です。
 例年4月になると直ぐに翌年3月の企画を詰める作業に取り掛かります。6月の総会の時点では、三島由紀夫と北杜夫との出会いからの交流を時系列で整理出来ていました。ところが、その二人の交流の経過を解説する展示だけでは、どうしても魅力のある展示にはならないように思えていました。それで、三島が同世代作家らに贈った、推薦文、序文、跋などを、収蔵している三島関係資料の中から抜き出してみると30点余になりました。たまたま買っていた本でしたが、こんなに沢山有るとは思いませんでした。そこで、これらも同時に展示すると、少しは魅力のある展示になるかなと思えていました。
 全文協の挨拶ではこのままの気持ちを伝えさせて貰いました。すると、いつも気に掛けて頂いている山崎一頴会長の一言で勇気が湧いてきました。「それは面白い」というような言葉だったと思いますが、この言葉で一気に企画を後押しして頂いたような気持ちになりました。本当に有り難かったです。
 目下は、「三島、同世代作家らへのメッセージ」というテーマで、企画の内容の細部を確認しています。30点余の推薦文を展示するために、いろいろ工夫しなければなりませんが、残念なことが出て来ました。それは、2013年以来、毎回続けてきた全国文学館協議会・統一テーマ「3・11 文学館からのメッセージ」のスペースを割愛せざるを得なくなったことです。当館テーマは「『美しい星』と人類救済の試み」でした。三島の新たな側面を興味を以て見て頂いていました。また、機会があれば調整して実施したいと思っています。
 ともあれ、来年も見易くて分かり易い展示に努めたいと思っています。



(2018年12月)
(隠し文学館 花ざかりの森 館長)

全国文学館協議会会報 第73号(2019年1月31日発行) 寄稿